以前、ある方から田舎の不動産を買ってほしいとの連絡が来ました。このような問い合わせは非常に多く、田舎の空き家問題の深刻さを伺い知ることができます。言い方は悪いですが、処分に困っている方が多く、無料でも引き取ってほしいというのが本音でしょう。実際に無料で取引されることや、逆に処分料をもらって家を引き取ることさえあります。
しかしながら、その辺の事情を知らない人は評価額に基づいた価格や、インターネット上の類似物件の価格で売り抜こうと考えます。評価額は固定資産税の元となりますから、たとえ需要がないただ同然の土地であっても、国はそれなりの評価額を恣意的につけているのです。
この価格を調整すれば税収を増やすことができますので、行政にとってはまさに打ち出の小づちです。不動産業者のウェブサイト上の価格も、田舎物件に関しては実際に想定している価格よりも高めにつけていますから参考になりません。このあたりの見解は、不動産に詳しい人であれば周知の事実です。不動産はプロの正解ですから、投資偏差値の低い一般人が手を出すと人生を棒に振ることになります。
それでは都心の不動産はどうか?というお話ですが、数年は値上がりするかと思いますが、所詮、ゲームにすぎません。東京が子供の教育に適した場所でしょうか?また、老後をゆっくり過ごせる場所でしょうか?仮に日本人にとってそうであったとしても外国人にとってはそうではありません。日本人の人口が減るのであれば外国人に来て住んでもらうしかありません。
日本では需要に基づいた堅実な不動産価格の上昇はありえないのです。東京はグローバルシティだと考えている日本人が多いようですが、見当外れもいいところです。グローバルシティーというのはロンドン、ニューヨーク、パリ、バルセロナ、シドニーのような都市を言います。世界中から人が集まる魅力的を持った都市なのです。とりわけロンドンとニューヨークは不動の人気があり、世界中から人が集まります。もちろん金融の中心であることも一因ではありますが、都市としての魅力は東京の比ではありません。
ニューヨークと比べれば、東京はダラスやアトランタなど地方と同じか、それ以下の位置付けだと思います。アメリカの人口は増加傾向で、日本の人口は減少傾向ですから、足元にも及ばないかもしれません。東京の魅力は、コンパクトシティであるため、企業訪問がしやすいことと、食が充実していることくらいです。外国人にとって不動産を所有して中長期滞在するような街ではないのでしょう。
日本で唯一可能性があるのは地方です。それも県庁所在地があるような場所ではなく、田舎の自然資源が豊かな場所です。ニセコの人気についてはご存知のことかと思います。これからは温泉地なども人気が出るかもしれません。しかしながら一時的なブーム感は否めません。日本はこれから衰退、ポジティヴな言い方をすれば成熟するしかないのです。これからはゴーストマンションや廃屋の出現、集落の消滅が日常的になってくることでしょう。物を売るにしても買う人が減るわけですから、高度なマーケティング技術を駆使して販売するか、行政と結託して無理やり売りつけるかありません。かなり厳しい状況になり、貧困層が劇的に増え、アメリカのような分断社会になることでしょう。先日、日本からサイパンへの直行便がなくなるニュースがありました。海外リゾートへ行くことができる日本人の数が減少したということです。旅行の目的地がシフトしたこともありますが、直行便の有無は景気を知る目安として非常に有益です。
日本は上記のような状況ですから、不動産価格もそれに応じた価格になるはずです。価格は需給バランスで決まりますから、それを冷静に見極めなければなりません。プレミア部分だけに目が行きがちですが、それはあくまでも上乗せ部分であり、価格を構成する主たる要因ではありません。