最強の農起業

元デンソー社員の農業奮闘記です。従来の農業経営にメスを入れた内容で、非常に楽しく読める一冊です。農業だけでなく、旧態依然の経営をしている業種にも応用が利くのではないかと思います。

私は実家でブルーベリーを2本育てているのですが、消毒もほとんど必要なく、大した手間もかけず2家族分のブルーベリーが収穫できます。これはビジネスになるのではないかと思い、ブルーベリーの本を探していた所に出会った本です。

農業にリスティング広告などのITノウハウやポジショニングなどのマネージメントの手法を取り入れ、いかに効率良く利益を出せるかということを徹底して追求したようです。「ブルーベリーではなく体験を売る」「戦わない戦略」「当たり前のことを疑ってみる」などのくだりは共感できるところが多かったように思います。

以前私は、ある農家の方にブルーベリーをお勧めしたのですが、どんどん落ちてきて収穫が間に合わないと人手がないことから却下されたことがあります。その解決策がこの本に載っていました。何も自分で収穫する必要はなかったのです。

農業は補助金でじゃぶじゃぶの業界です。補助金をもらって始めようかという考えの人が多いと思います。しかしながら、筆者の畔柳(くろやなぎ)氏は、補助金に頼らずやることが成功の秘訣と述べているところに非常に共感が持てます。

本書では農地を取得するまでについてはそれほど紙面を割いておりませんが、実際は、農地を取得するのが非常に困難です。よそ者が田舎に行ってすぐに農地を借りることはほぼ不可能です。行政に収納を支援する部門が設置されている都道府県もありますが、基本的に何の役にも立ちません。私も何度も相談に行きましたが、対応も非常に悪く、時間の無駄でした。

自ら現地に足を運び、3年かけてやっと農地を借りることができました。私のところは条件が良いので何の問題もありませんが、運良く農地を取得できても水利権の問題があります。水利組合加入に高額な料金を請求されたり、十分な水が供給されなかったりと、よそ者が縁もゆかりもない土地で、農業ができるようになるまでの道のりは決して楽なものではありません。