ビッグデータがもてはやされている昨今ではありますが、現場の「勘」のような曖昧で根拠のない意見も大切なように思います。
ヨーロッパにツアーで行ったとき、あるご夫妻と一緒のテーブルになりました。ご主人は同じツアーに参加している人を見て「あの人は消防士で新婚旅行」、「あの人は医者」、「あなたはすごく難しいので自信はないけど学校の先生かな」と言いました。すかさず奥様が「すみません。主人は刑事で職業病なんです」と謝ってきました。突き詰めればそれもデータなのかもしれませんが、このような刑事の勘が逮捕に結びついたケースは少なくないはずです。
日本酒造りにおいても、長年、杜氏(酒造りをする人)の勘に基づいて仕込みが行われてきました。それをデータ化したのが旭酒造の獺祭です。いまや獺祭はニューヨーカーにも人気で世界中に輸出されています。データ化すれば、素人でも酒造りができることを証明しました。これはこれで素晴らしいことだと思います。料理のレシピも同じことですし、仕事のマニュアルも同様です。
データは有益ですが、万能ではありません。刑事の勘のような、データに依存しない曖昧なものも大切にしたいものです。