床屋さんで髪を切ってもらっているときのことです。隣に座った中年男性が理容師さんに「大分禿げちゃってね~」と言うと、理容師さんは「そんなことないですよ~。全然大丈夫ですよ~」と返していた。
その中年男性はお世辞にもふさふさとは言えない。ハゲかハゲでないかと言えば間違いなくハゲに属する。私も髪が薄い(見る人によってはハゲ)仲間として、その男性を気の毒に思ったが、理容師さんの返しについて考えてみた。
大前提として理容師さんも間違いなくハゲだと思っているはずです。あなたはどちらを選びますか?
A:「そんなことないですよね〜」と言ってハゲていることを否定する。
B:「いや〜結構きてますよね〜」と言ってハゲていることを肯定する。
Aはお客さんの気分を害さず、おそらくその後も床屋に来てくれるかもしれません。言ってみれば現状維持。当たり障りのない応答です。
Bはお客さんを激怒させる可能性があります。一方で、可能性は低いですが、「お前は正直だ」と信用を得ることができるかもしれません。育毛剤を置いてある理容室であれば、それを売り込むことができるかもしれません。
世間一般、本当のことは言ってはいけないので、Aが模範解答となるでしょう。しかしながら、髪のプロであるならばハゲを目立たなくする髪形を提案したり、育毛シャンプーやマッサージの仕方を教えるなど実用的且つ的確なアドバイスをすべきだという考え方もあるかもしれません。
服屋さんで明らかに似合わないスーツを買おうとしているお客さん(失礼!)に対して「お似合いですよ」と迎合するよりも、少しイラッとするかもしれませんが、「この服は体の線が太く見えるから、こちらの方がお勧めです」と提案してくれる店員さんの方が信用できるという人もいるはずです。
事実だからといってそれをすべて口に出していいわけではありません。傷つく人もいるでしょうし、言わない方が幸せなこともあります。医者がすべての患者に対して正直にがん告知をできるかと言えば、それは難しいかもしれません。
プロはプロの自覚を持ち、よく考え、それに応じた言動を取らなければならないと思います。それにしても世の中、考えさせられることばかりですね。情報量が増えれば増えるほど、考えることが増えるので、現代人は情報を制限した方が良いのかもしれませんね。