障害者を「障がい者」、被災者を「被さい者」とする表記を目にすることが増えました。私も書類の提出先によって配慮していますが、どちらにするかというのは、なんとも不毛な議論のような気がします。ひらがな表記にするか漢字表記にするか各都道府県及び市町村に問い合わせが多いようです。政府も検討会を開き、結果を公表しています。役人にはコスト意識がないのでしょう。単価の高い大人が数十人集まって議論しているのですから滑稽でもあります。もっとやるべきことはたくさんあるはずです。
英語でも表現の変遷はあります。たとえば「障害者」はhandicapped, disabled, physically challengedなど絶えず変化しています。日本でもマネしたいのでしょうか。私の父親は障害を持っていますが、「害」という漢字で気分を悪くしたことなどないと思います。聞いたところ、そのようなことを気にしていないとのことです。それよりも「後期高齢者」の方がショックと言っていました。そう言われてみれば「後期高齢者」の方が終末感が漂っている言葉のような気もします。
「外人」は差別用語で「外国人」が正しい表現としていますが、私の知り合いの外国人は自分のことを「ガイジン」と呼んでいます。海外のガイドブックには日本に行くとあなたが「ガイジン」と呼ばれますと書いてあります。お年を召した方は「ガイジンさん」と、「さん」付けで読んでいますし、決して差別用語ではないと思います。過剰反応もよいところなのではないでしょうか。
最近は「感動ポルノ」という言葉を用い、障害をお持ちの方が「もうそんなのやめようよ」というメッセージを発信しています。たとえ障害をお持ちの方が間違ったこと、不道徳なことをしても、それに対して非難すれば社会的に抹殺されてしまう可能性があるので、誰も物を言わなくなってしまうのです。
私見ですが、障がい者というくくりを設けること自体、差別だと考えています。もちろん、状況に応じた配慮は必要ですが、年齢、性別、国籍、そんなことを聞くこと自体、無意味だと思います。外見や言葉が違っても常に人として向き合うというだけです。学生から学ぶこと、幼稚園児から学ぶこと、人から学ぶことはたくさんあります。
障がい者の有名人と言えば、乙武さんです。彼の一連の問題について、芸能人や一般人と比べるとそれほど叩かれなかった記憶があります。ベストセラー「五体不満足」を読んで感動した人はがっかりしたかもしれません。シュールなのは障がい者のお笑い芸人ホーキング青山さんです。なかなかの毒舌です。興味のある人は彼の本を読んでみてください。
障がい者関連で気になった本は「障害者の経済学」です。このシリーズで「刑務所の経済学」という本もあります。なかなか面白いのでぜひ読んでみてください。
さて、表記を変更すると別の問題も生じます。学校の漢字テストはどうなるのでしょうか?修正しなければならないものもたくさん出てきてしまいます。せっかく覚えた漢字を書いたらひらがなの方が正しいと言われてしまうのです。
話は逸れてしまいますが、学校の漢字テストも想像力が足りない気がします。書店でよく見かけるテストの珍解答的な本には思わず吹き出してしまうような解答がたくさん並んでいます。父と「せんとう」に行くという漢字の問題で、「銭湯」が「戦闘」になっているものが珍解答として取り上げられていましたが、アフガニスタンなどでは正解の可能性もあります。表記の問題は、この銭湯の問題に戦闘地域への配慮が足りないと言っているのとそう変わらないような気もします。
参考までに政府の見解を紹介しておきましょう。
「障害」の表記に関する検討結果について
他にも、「ヴ」の表記が「ビ」に変更されたニュースもあります。たとえばセントクリストファー・ネイヴィスがセントクリストファー・ネイビスに変更されました。表記は記事や本を書く者にしてみれば本当に悩ましい問題です。
オランダが、Hollandかthe Netherlandsかという問題にも答えが出ました。オランダ政府が正式にthe Netherlandsとすると発表しました。グルジアがジョージアに変わったりと、古い知識はアップデートの必要があるかもしれません。私の知り合いの元校長はバンクラディッシュのことを東パキスタンと呼んでいます。
余談ですが、標記で気をつけたいのは、富士フィルム→富士フイルム、キャノン→キヤノンです。違いが分かりますか?名称であれば、宅急便、テトラポッド、セロテープ、バンドエイドなどのも気をつけたいですね。